ここではお店ごとに違う、さまざまな個性のお好み焼きについて考えてみたいと思います。
広島クラッシックお好み焼き
お好み焼きを考えるには、まず、今の広島のお好み焼きを食文化となるまで築き上げた「みっちゃん総本店」さんを最初にあげないといけないでしょう。これぞザ・広島のお好み焼きです。とりあえず写真は、みっちゃん総本店 雅さんのお好み焼きです。
まさしく広島のお好み焼きスタンダードと言ってもいいですね。広島クラッシックお好み焼きです。ではとりあえず、みっちゃん総本店さんのお好み焼きの特徴を見てみましょう。
・生地は薄い正円。野菜がちょっとだけはみ出る程度の大きさ
・野菜を山積み、その上に天かすと肉を乗せてひっくり返す
・麺を焼き、その上にお好み焼きの本体を乗せる
・玉子は鉄板上にヘラで丸い形に整えててお好み焼きを乗せる、たまごの完熟焼き
こんな特徴の総本店さんのお好み焼きに、細部も含めて割りと近いお好み焼きを焼かれているのが、新天地みっちゃんさん、いっちゃんさん、ほかには、へんくつ屋さんや麗ちゃんさん、お好み村のお好み焼き屋さんも、特に古くからのお店はそうだと思います。
麺の焼き方がみっちゃんよりも若干、パリっと焼かれているのですが、焼き方はみっちゃんに近いお店も多いですね。 貴屋。さん、くろべえさん、かんらん車さん、胡桃屋さん、大丸堂さんなどです。
ワイルドなお好み焼きだぜ!
屋台時代のみっちゃんで始まったお好み焼きは、長年の間に色々なお店でさまざまな焼き方が生まれてきました。そして、みっちゃんの対極として代表的なのが、八昌(薬研堀店、五日市店)さんの、野性的でワイルドなお好み焼き。楕円で厚めのしっかりとした生地を使い、そして焼き時間をかけてじっくりと作られます。
麺は、ラードをかけた後に鉄板に広げて焼きます。この焼き方だとみっちゃんと違って、麺一本一本が、表面がパリパリに焼かれるんですね。たまごは黄身を潰さずにお好み焼きを乗せてすぐにひっくり返す半熟焼きです。
見た目がこんな感じなので、わたしは「ワイルド調」って言ってます。
この八昌さんやそのお弟子さんのところで修行して独立され、これに近いワイルド調なお好み焼きを焼かれているお店も多くあるんですね。ロペズさん、とらじさん、やまさ家さん、MASARUさんなどがそうですね。
麺パリ & やわらか麺
「麺パリ」というのは、鉄板の上で麺にラードをかけて焼き、揚げたような感じにすることでパリパリっとなった麺のことです。その最たる店舗がは横川駅に近い二店舗、みっちゃん横川さんと日々来さんです。この両店舗の麺はヘラを入れると、麺がぶちぶちっと切れていく振動が手に響いてくるくらいまで麺を固く焼きます。そうですね、ベビースターラーメンを束ねたような感じで、パリパリ(paripari)というよりも、バリバリ(baribari)という表現がぴったりだと思います。これは好みもあるのでしょう。人によっては固くて口の中が痛いと感じる方もいらっしゃるみたいです。
写真は日々来さんのお好み焼きですが、麺の鉄板側がきつね色になっているのが分かりますか? この麺の上にお好み焼き本体、つまり生地や野菜部分を乗せて裏返したのが、仕上がりの方の写真です。こちらは、お好み焼きの端が浮き上がっている、上に乗っている麺の部分がキノコの傘状になり、野菜の部分が茎になって浮いているんですね。それくらいの固さのある仕上がりです。食感としては、クッキーくらいの固さなのかな。麺のパリパリ感んが好きな方にとっては、これがなんとも言えないうまさなんですね。
さて、麺パリと言っても普通の広島のお好み焼きは、ここまで固いわけではありません。
一般的な麺パリは、パリパリの中にも柔らかい部分を残した焼き方になっています。ちょっと細かい話ですが、これは、実は2種類の焼き方があるんですね。1種類目は麺一本一本の、中心部をそのまま残し表面だけをパリっと焼くような焼き方で、茹でた麺を鉄板に大きく広げてラードをかけて焼きます。この焼き方の代表的なお店が八昌さんと三幸さん、そしてその系列のお店です。もう一種類の焼き方は、お好み焼きの周囲と真ん中で麺の硬さが違っていて、食感的にも色々な固さを楽しむことができる焼き方なんですね。茹でた麺を先にお好み焼きの完成型に整えてからラードをかけるんです。みっちゃん総本店さんが代表的で、貴家さんやこひなたさん、お玉のキャベツさん、そして先程のみっちゃん横川さんや日々来さんもこの焼き方です。この焼き方はお店によって、しっかりとしたパリパリ感だったり、いわゆる「ややパリ」のような感じまでさまざまなんですね。
逆に、弾力のある食感や柔らかい感じで仕上げをされているお店もあります。柔らかい麺だと、麺が持っている本来のコシやお店独自の麺の味付けを楽しむことができるので、麺パリとは、また違ったおいしさがあるんですね。代表的なのが電光石火さんですが、ほかにもju-shiさん、さっちゃんさん、ちゅうりっぷさん、Bali-Aさんなどがこのやり方をされています。
たまごの半熟焼き
八昌さんに代表されるたまごの半熟焼き。最近半熟のお好み焼きも多くなってきました。
そして半熟といえば、ちゅうりっぷさん、ぼう。さん、やまさ家さんです。絶妙な瞬間技で作られる、とろとろたまごの絶品のお好み焼きです。
半熟で多いタイプは、「やや半熟」と表現するほうが言ったほうが近いかもしれないです。焼きたての状態では半熟で、食べているうちに麺の熱で固まっていくんですね。麺にいい具合にたまごが染みこんでいるんです。胡桃屋さん、かんらん車さん、くろべえさん、さっちゃんさん、日々来さん、三幸さん、鉄華さん、てっぱん食堂さんなどがそういう感じです。
変わったところではこひなたさん。ここのお好み焼きは目玉焼きの後のせで半熟風にされているんですね。上から見るとつやつやで、玉子を別に焼いているのがわかると思います。
うすうすお好みと極細麺
ちょっと特徴があって面白い焼き方だなぁと思ったのは、HAZEYAさん、悟空さん、ひろみさんの方式です。博多ラーメンで使用するような極細麺を使用して、野菜の蒸し焼きの時にヘラでしっかりと抑えて薄く薄く仕上げるんです。焼く時間が比較的早くて、仕上がりの見た目がとても綺麗。そして若干小さめのお好み焼きが特徴です。悟空さんとひろみさんはお店がとてもオシャレなこともあり、そして小さめのお好み焼きなので、少食の女性の方でも安心して行くことができると思います。
※写真はひろみさんで撮影
というわけで、広島のお好み焼きの特徴を見てきました。あらためて、それぞれのお店のお好み焼きが、ひとつひとつ個性的なのが広島のお好み焼きなんだと思いましたね。こんな味方をしてみると奥深いです。